第4章|温かさの裏で、濁っていたもの
人の温かさを知ったあとで、
同時に、別のものも見えるようになった。
それは、急に現れたわけじゃない。
最初から、そこにあった。
第1ブロック|過去・導入
店に少しずつ人が増え、
スタッフ同士の会話も増えていった。
空気は、前より柔らかくなった。
笑顔も増えた。
でも、
その裏側で、
違う種類のざらつきが、ゆっくり溜まっていくのを感じていた。
最初は、聞き流せる程度だった。
誰かの悪口。
小さな噂。
「あの人がこう言っていた」という話。
どこの職場にもあるものだと思った。
気にするほどのことじゃない、と。
でも、
違和感は消えなかった。
第2ブロック|葛藤・転換
数字を見ていると、
説明がつかないズレが出始めた。
売上と、
レジの中身。
帳簿と、
手元の感覚。
ほんの少し。
でも、確実に合わない。
最初は、自分の見落としだと思った。
疲れているせいだ、と。
でも、同じことが何度か続いた。
お金が、どこかで薄くなっている。
問い詰めることは、しなかった。
証拠があったわけでもない。
それに、
誰かを疑うという行為そのものが、
ひどく疲れることだと知っていた。
だから、
気づかないふりをしようとした。
でも、
一度見えてしまったものは、
簡単には消えなかった。
人の温かさと、
人の弱さが、
同じ場所に同時に存在している。
その事実が、
静かに、でも確実に、
店の空気を濁らせていった。
第3ブロック|現在・暫定結論
誰かを悪者にしたいわけじゃなかった。
ここで起きていることは、
特別な話じゃない。
お金も、人間関係も、
人が集まる場所には、必ず生まれる。
ただ、
この店は、
もう「見ないふり」で進める場所じゃなくなっていた。
温かさだけを信じるのも、
冷たく切り捨てるのも、
どちらも違う気がした。
まだ、
どう扱うのが正解かは分からない。
でも、
この濁りを放置したまま進めば、
店そのものが、少しずつ壊れていく。
そんな予感だけは、
はっきりとあった。
この時点では、
まだ答えは出ていない。
ただ、
次に何かを決めなければならない場所に、
自分が立っていることだけは分かっていた。
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