第5章|全部を見ると、決めた日
濁っていると分かっていて、
何もしないという選択肢は、
一番楽だった。
見なかったことにする。
誰かに任せる。
「海外だから仕方ない」で済ませる。
そうすれば、
自分の手は汚れない。
第1ブロック|過去・導入
実際、
そうしようと思ったことは、何度もあった。
全部を把握するのは、面倒だった。
人の感情も、金の流れも、
正直、見たくない部分の方が多い。
信じたい気持ちもあった。
疑うより、信じていたほうが楽だった。
でも、
楽な選択肢を選び続けた先に、
この店がどうなるかは、
なんとなく想像がついた。
少しずつ壊れて、
気づいたときには、
誰のものでもなくなっている。
第2ブロック|葛藤・転換
全部を信じ切るのも違う。
全部を疑い切るのも違う。
じゃあ、どうするのか。
答えは、
意外と単純だった。
全部を見る。
人も。
金も。
数字も。
関係性も。
誰かに丸投げしない。
でも、支配もしない。
毎日の売上を見る。
帳簿を見る。
現場を見る。
会話を聞く。
空気を見る。
その判断が、
正しいかどうかは分からなかった。
ただ、
自分が一番しんどい選択肢を、
避けていないことだけは、分かった。
この役割を引き受けるということは、
誰にも感謝されない可能性も含んでいる。
それでも、
ここから先を進むなら、
この位置に立つしかなかった。
第3ブロック|現在・暫定結論
その日を境に、
店の見え方が変わった。
楽しい場所でもあり、
同時に、
とても神経を使う場所になった。
人を信じることと、
人を見ることは、
同じじゃない。
この感覚は、
実際に背負ってみないと、
分からなかったと思う。
今も、
この判断が正しかったかは、分からない。
ただ、
逃げなかったという事実だけは、
ここに残っている。
そしてその選択が、
次の変化を、
静かに呼び込んでいった。
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