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第6章|店の水が、少しずつ澄んでいった

何かを大きく変えた感覚は、なかった。

改革をしたつもりもない。
誰かを切ったつもりもない。

ただ、
「全部を見る」と決めてから、
少しずつ、店の空気が変わり始めた。

第1ブロック|過去・導入

最初に変わったのは、
数字でも、売上でもなかった。

会話だった。

誰かが誰かの話をするとき、
言葉の選び方が、少しだけ変わった。

以前は、
どこかに棘が混じっていた言い回しが、
いつの間にか、減っていた。

悪口が、完全になくなったわけじゃない。
でも、
空気を濁らせるほどの量ではなくなっていた。

第2ブロック|葛藤・転換

数字も、少しずつ安定していった。

急に伸びたわけじゃない。
派手な変化もない。

ただ、
説明のつかないズレが、減っていった。

帳簿と、
レジの中身と、
感覚が、同じ方向を向くようになった。

人の入れ替わりもあった。

無理に引き止めた人はいない。
無理に残した人もいない。

気づいたら、
ここにいる人たちは、
同じ方向を向いて働いていた。

それは、
仲が良い、という意味じゃない。

ただ、
余計なエネルギーを使わなくなった、
そんな感覚だった。

第3ブロック|現在・暫定結論

あとから思えば、
店の「水」が、少しずつ澄んでいったのだと思う。

完全に透明になったわけじゃない。
今も、濁ることはある。

でも、
以前のように、
何が原因か分からない濁りが、
溜まり続けることはなくなった。

誰かが何かをした、というより、
不自然なことが、起きにくくなった。

それだけで、
この場所は、ずいぶん呼吸がしやすくなった。

うまくいっている、と言えるほどではない。

ただ、
壊れながら進んでいる感覚は、なくなった。

この変化が正しかったのかは、
まだ分からない。

でも少なくとも、
この店は、
無理をしながら延命している場所ではなくなった。

そう感じられるようになった。

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