第3章|数字の向こうに、人の生活があった
最初に動いたのは、数字だった。
SNSの表示回数。
知らない名前のアカウント。
画面の向こうにいる、顔の見えない誰か。
第1ブロック|過去・導入
それまでは、
数字はただの数字でしかなかった。
表示回数が増えた。
フォロワーが少し増えた。
だからといって、
店の中の景色が、すぐに変わるわけじゃない。
それでもある日、
「SNSを見て来ました」
そう言う客が、初めて店に入ってきた。
画面の中にいた「誰か」が、
目の前に立っていた。
それだけのことなのに、
胸の奥が少しだけ熱くなった。
第2ブロック|葛藤・転換
店に人が来るようになると、
自然と、スタッフのことを見る時間も増えた。
出勤時間。
表情。
仕事の仕方。
それまで「スタッフ」としか見ていなかった人たちが、
少しずつ、違う存在に見え始めた。
話をするようになった。
何気ない会話の中で、
それぞれに生活があることを知った。
家族がいる。
子どもがいる。
ここで働く理由がある。
夜の仕事をしているけれど、
昼には別の顔がある。
誰かの母親で、
誰かの娘で、
誰かの生活を支えている人たちだった。
その事実が、
じわじわと効いてきた。
この店は、
自分ひとりの挑戦じゃない。
知らないうちに、
いくつもの人生の上に、乗ってしまっている。
第3ブロック|現在・暫定結論
正直、
その重さを背負う覚悟があったかと言われると、分からない。
でも、
知ってしまった以上、
何もなかった頃には戻れなかった。
数字の向こうには、
人がいた。
生活があって、
守りたいものがあって、
簡単には投げ出せない事情があった。
この店をどうするか、という判断は、
いつの間にか、
人の人生をどう扱うか、という問いに変わっていた。
まだ答えは出ていない。
ただ、
軽い気持ちで壊していい場所じゃないことだけは、
はっきりと分かってしまった。
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